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Doctor Mからのメッセージ#096 (2016.07)
        

体調(健康や病気)の良循環と悪循環は重要で、経済と似ている

◎経済活動は「生き物」と言われます。私が思い付くところでは、①消費者マインド(気持ち)により景気の勢いが左右されるのは、如何にも「病は気から」の如く、精神状態が自律神経や循環機能を介して身体の状態に影響を与えること(逆の方向も真です)のようです。しかも、その変動の仕方はしばしば「良循環」と「悪循環」を伴います。経済の悪循環の例として、不景気➜買い控え➜さらに不景気、が単純で判りやすい。末端の国民の多数は「判っちゃいるけど」買い控えてしまう。お金の少しある人は、こういう時にこそ消費をしましょう。自由経済に完全に任せていては「悪循環」により破綻に陥ることを危惧して、国家による資金注入することを「輸血」といい、その経済を輸血経済ということがあります。

◎経済と類似する身体の悪循環(および良循環)というのは診断や治療に物凄く重要なキーワードだと小生は認識しております。先ず、疾患などで栄養(血中の蛋白質、特にアルブミンの量)が不足してきた場合➜浸透圧の機序により体液が血管内から血管外に漏出していきます。よく判るのは浮腫(むくみ)の出現です。これ自身も鬱陶しいですが、あらゆる組織が同様に水浸し傾向になっているのです。➜各臓器の機能が大なり小なり低下する。程度により、肺における呼吸機能(ガス交換)が悪化して酸素不足になる。腸管では栄養の吸収機能が低下する。➜各臓器の機能低下が進み、かつ、低栄養が進む。見込みがある場合は、限定的に貴重な資源であるアルブミン輸液や全血輸血(貧血もある場合)を行うことにより、悪循環が良循環の転機にし得ることがあります。当院では時々実施しており、点滴直後から低栄養という状況は改善し、直ちに直欲が改善することが多いです。結果的に総医療費の節約になることも稀ではありません。

◎運動不足➜筋力低下➜以前よりも体動がしんどくなる➜さらに筋力低下、も同じことです。これについては肥満という悪循環因子が絡んでいることがあり、そういう場合はさらに厄介です。筋力低下については、僅かでも意味のある程度の負荷をかけて身体を動かす以外に有効な対策はありません。電気治療やマッサージだけでは筋力の回復は全く見込めません。膝の悪い人は専門的な治療の有無は別にして(これだけでは筋力は向上しない)、自分ですべきことは「膝の装具をドラッグストアなどででも買って、使って歩くこと」です。下肢のもっと悪い人は「歩行器を用いての立位維持や足踏み運動」が現実的で有効な対応でしょう。

◎心不全(肺が浮腫ぽくなる)や肺炎➜呼吸機能障害➜低酸素血症➜各臓器の機能低下➜原疾患の悪化、というのもあります。心不全の場合は、とりあえず「利尿剤」を用いて体内の水分を強制的に排除することで(低酸素血症の場合は酸素療法もする)良循環への転機ができることがあります。肺炎の場合は、薬物的には(抗菌剤は基本として)副腎皮質ステロイド(副ス)が良循環の契機になることも期待したいところですが、個々でその適用が妥当かどうかは難しいところです。理学的には去痰を的確にできるかどうかですが、これも言うほど確かなものではありません。肺炎の方が治療経過の予測が難しいです。

◎頻脈(心拍数が多い)というのは様々な原因によって状況や対応が違うかと思いますが、心不全を契機とした頻脈の場合は、心不全➜(低酸素血症)➜頻脈➜ポンプ作用のさらなる低下・酸素消費の増大➜心不全の悪化➜頻脈の悪化、という悪循環が起こることが多いです。通常考えられる対策は、安静とファーラー位(胸部を挙上するような寝かせ方)の他、利尿剤・酸素投与・適量の抗頻脈剤などで良循環に転換することを期待します。これらによっても良循環にならない場合で、積極的な治療が適切と考えられる場合は、特殊な非経口的な心不全治療薬・ペースメーカー併用下の抗頻脈剤・一時的な人工ポンプの動脈内挿入・手術など、高度専門科ではいろんなオプションがあります。

◎咳喘息でも、アレルギー性炎症➜咳➜気管支粘膜への刺激➜炎症の悪化➜咳の悪化、というのがあります。大抵はいつまでも続きませんが、「いつまでか?」は判りません。


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