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Doctor Mからのメッセージ#035                      (2004.1)
             空腹時検査と食後検査の意味するところの余談


 人間ドックなどでは大抵は空腹のまま朝受検するようになっているのではないかと思います。だから、採血検尿なども空腹時のことになります。やはり、検査の説明する立場になっても、空腹時検査値で説明する方がやり易いし、無難と思います。しかし、そもそも人間ドックで空腹のまま受検される最大の理由は、その日に胃カメラとか腹部エコーなどのメニューもあり、これは空腹でないと検査がしにくいからが一番ではないかと思います。

 斜交い(はすかい)から話をするのが好きで済みませんが、もし、就職前や受験前などの健康証明書のために検査をする場合は、是非とも空腹時にされることをお勧めします。こういう場合は、基準値からはずれた結果が出るとご本人が鬱陶しいのではないでしょうか。検査した医師の方も鬱陶しいです。勿論、異常値が出れば仕方がないことではありますが。例えば、多少食後血糖が高めの人なら、空腹時では基準値内なのに、食後なら尿糖が陽性とか血糖が一寸だけ高いという結果が出る可能性がありますね。それと、検尿などの場合は、脱水傾向の場合は尿が濃くなって、糖、蛋白、潜血などの結果が多少とも陽性に出易いのではないかという心配があるように思います。だから前日に水分を充分に摂っておくのが良いような気がします。

 それとは逆に、本当の意味で、健診を受ける場合は(人間ドックや基本健康診査や職場健診)、隠れた異常も早めに見つかる方が良いという観点からは、異常の出にくい空腹時検査は感度が悪くなると思われます。例えば、食後に検尿すれば、糖尿の疑いが見つかったのに、空腹時に検査したばっかりに異常が見つからなかったという場合があります。でも、人間ドックの場合は先ほどの話のように、空腹で受検するのが普通です。しかし、通院中の採血や検尿の場合は、早く異常所見を見つけよう、つまり検査の感度を良くしようということを優先すると、むしろ食後検査の方が良いという考えも成立します。まあ、私個人の考えとしましては、コレステロール測定の場合の一部に空腹時採血の方が説明がし易い場合がありますが、それ以外は空腹時でも食後でも、指導には余り困らないように思っています。

 (総コレステロール)=(LDL-コレステロール)+(HDL-コレステロール)+(中性脂肪×0.2)という関係式があります。「LDL」は「悪玉」、「HDL」は「善玉」と呼ばれるものです。常の検査ではLDL-コレステロールは直接測定されずに、この関係式から算出されています。だから、LDL-コレステロールは、総コレステロールとHDL-コレステロールと中性脂肪の三つとも測定しないと判らないのです。この式から判るように、総コレステロールというのは三つの因子の混ざったものなので、今となっては実態としてはややこしいものです。今までの多くの大規模な動脈硬化関連の臨床研究が総コレステロールの値を以ってなされていますので、データー的には今でも重要なのは仕方ないのですが、今後は、善玉、悪玉、中性脂肪という風な個別の解析が増加すると思われます。問題は、中性脂肪が大体350という値を超える程高値になると、上記の関係式が成り立たなくなって(何故そうなるかはややこしいです)、LDL-コレステロールが算出されないということになり、総コレステロール値高値の判断が難しくなるということです。前号で触れたことはこのことでした。

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